総論
まず、平成17年度の試験の形式上の特徴として、(1)個数問題が全体で12問あり、昨年に比べ9問も増加した。(2)総ページ数が42ページとなり、昨年より4ページ増加した。(3)民法の出題が1問増え、全部で6問となり、行政書士法の出題が2問となった、という点が挙げられます。
次に、内容的には、(1)出題論点は基本的なものだったが、細かい知識を問うものが多かった。(2)各分野とも時事的要素が多く含まれていた。(3)記述式の難易度が例年になく高かった、という点が挙げられます。
以上を踏まえると今年度の本試験は、全体的に応用力を問う問題が多く出されたといえます。ここで「応用力を問う問題」とは、2つの意味において捉えることができます。一つは、基礎知識に基づいて現場で思考するタイプの問題です。もう一つは、普段の学習であまり触れない発展的知識を問うタイプの問題です。平成17年度の試験に関しては、前者のタイプの問題も若干あるものの、全体的には後者のタイプの問題数が多く、特に記述式問題にその傾向がみられました。その結果全体的な得点は伸びなかっただろうと推察されます。
・ 法令・択一式問題
最初の基礎法学の問題では、非常に細かい条文知識と刑法の知識が要求され、出鼻を挫かれた方も多かったと思います。憲法は、条文の知識を問う問題が中心でしたが、昨年同様、その場での法的思考力が問われる出題(問題4)がありました。行政法・地方自治法・税法等は、やや細かな知識が要求される問題も見受けられましたが、難易度としては、ほぼ例年並だったといえるでしょう。
択一式で特筆すべきは、民法の出題が6問となったことと、商法において商行為からの出題(問題34)がなされたことです。民法は出題数が増加するとともに、比較的細かな条文・判例知識が要求されたので、正解するのが難しかったと思われます。また、商行為については、近年は出題がなく、全く準備していなかった方も多かったはずです。この点で、得点計画に狂いが生じてしまった方がいらっしゃるのではないでしょうか。
出題数の内訳を昨年度と比べてみると、行政書士法が1問減り、民法が1問増えました。一昨年以来の出題数の変化をみると、民事法関連科目の比率を高めようとする意図は明白です。
そして、法令科目・択一式では、判例の知識を問う問題が数多くみられました。日頃の学習において、判例を丹念に学習していた受験者にとっては有利な問題といえますが、一般の受験者にとっては厳しい問題だったのではないでしょうか。問題3や問題6のような基本問題をとりこぼさずに確実に得点していくことが合格の必須条件といえるでしょう。
・ 法令・記述式問題
憲法と行政法では法律学上の用語が問われており、行政書士試験の過去問学習では対応できない問題でした。憲法の記述式問題(問題36)で、一般の受験者の学習レベルを明らかに超えた問題が出題されていました。問題37の「行政審判」と「実質的証拠」も難しい問題でした。総じて、記述式問題は難しかったといえます。そのため記述式での得点を伸ばすことができず、苦戦された方が非常に多かったようです。
行政書士試験は、憲法・民法・商法・行政法などの学習を既に行っている司法試験、司法書士試験、公務員試験、法科大学院受験生及び法科大学院生等法律既習者の方にとって、断然有利な試験になっているように感じます。法律初学者の方が独学で行政書士試験に合格することは、これまで以上に難しくなってくると思います。
・ 一般教養
平成16年度のようなエキセントリックな問題は影をひそめ、オーソドックスな問題が出題されていました。 理数は比較的素直な問題でした。国語で外来語が問われたのは旧試験制度以来でしたが、内容は時事的要素が強いものでした。文章読解等は例年通りでした。社会も時事問題については新聞やニュースで取り上げられている類の内容だったので、普段の学習によって基準点に到達することができたのではないかと思われます。
ただし、従来の「一般教養」科目は、平成18年度の行政書士試験より「行政書士の業務に関連する一般知識等」と名称が変更されるとともに、従来の20問から14問に出題が減少します。出題内容としては、「政治・経済・社会」「情報通信・個人情報保護」「文章理解」に限定されました。 つまり、一般教養と言うよりは、行政書士の業務に関連する常識的な知識が、今までより以上に、問われることになると考えられます。
・ 総括
平成17年度本試験は、全体的に難しいものでした。特に記述式での失点を、いかに択一式問題で挽回できるかがポイントだったといえます。その意味でも、基本的な条文知識と基本的な判例知識をマスターし、これらの基礎力の上にさらに問題演習を行うという正攻法の学習法の重要性を再認識させられたということもできるでしょう。
また、受験生のレベルアップを見越して、容易には正解できないように出題されていたという印象です。時間内になんとか正解にたどり着くには、正確な条文・判例の知識がなによりも要求されました。行政書士試験は、来年度から新しい制度で行われることが決定していますが、この傾向は新試験に引き継がれると予想されます。また、問題4のように現場での法的思考を要求する問題や、民法の事例問題での出題レベルも次の試験につながっていると思われます。
新行政書士試験に対応するには、広範な範囲の法律について、条文・判例を正確に理解・記憶するとともに、現場での処理能力も身に付けなければなりません。これを独学で行うことは、ほぼ不可能といえ、受験指導機関において適切な指導を受けることが必要不可欠となると思われます。
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